
中国出張で困ることの一つが中国のネット規制ですが、それを手軽に回避できるのが「SIMフリースマホ×香港SIM」の組み合わせ。
その香港SIMの一つ「跨境王」に待望の4G版が登場したのですが、やや癖があって今のところ初心者にはお勧めできないかな、という状況です。
中国のネット規制を回避できる「香港SIM」
中国出張者の悩みのタネの中国ネット規制。
この規制があるために、ホテルのWiFiなどからGmailやFacebookなどを見ることができないのでかなり不便を感じます。
この中国のネット規制を回避する方法(俗に「壁越え」と呼ばれます)には様々な方法がありますが、ある程度の頻度で中国に行く人にオススメなのが「SIMフリースマホ×香港SIM」の組み合わせ技です。
日本で販売されているスマホと相性のいいチャイナ・ユニコム
上の記事では現在販売されている中国向け香港SIMを紹介していますが、中でも中国聯通香港(香港聯通)が提供するSIMは、日本で販売されているスマホと相性がいいのが特長です。
というのも、香港聯通のSIMを中国国内で使う時にはチャイナ・ユニコムの電波を使うのですが、チャイナ・ユニコムの周波数(バンド)は日本でも使われている周波数のため、日本で販売されているスマートフォンがそのまま使えることが多いのです。
香港聯通の中国向けSIMにはこれまで3G版しかなかった
ただ、香港聯通の中国向けSIMにはこれまで3G版しかなかったため、速度が遅いという問題がありました。
速度が遅いと言っても1Mbpsぐらいは出るので、WEB閲覧ぐらいなら問題ないのですが、画像や添付ファイルの送受信などに使おうと思うと場合によってはかなりストレスを感じるとの声もネット上ではちらほらと見かけていました。
中国移動香港(CMHK)のSIMは日本のスマホの対応が少ないTD-LTEを使用
一方で、「香港SIM」には「中国移動香港(CMHK)」の4G(LTE)版があるのですが、こちらはTD-LTE Band39, 40, 41という周波数を使っているため、対応スマホが限られるのが弱点です。
「跨境王」に待望の4G版が登場!
そんな訳で、中国出張者の多くが「聯通香港のSIMが4Gに対応したらいいのに…」と待ち焦がれていたことは想像に難くあリません。
そして先日、中国聯通香港がついに4G対応の中国大陸向けSIMをリリースしたとのニュースが届きました。
私がこのニュースを知ったのは、香港のスマホ情報の権威「山根康宏のモバイルネタ」さんからの情報です。
上の記事と続く中国聯通香港、中国香港データ共用プリペイドSIMの4G版を新発売 | 山根康宏のモバイルネタによれば、今回のアップデートでは「跨境王」と「7日間データSIM」が4G(LTE)に対応したとのこと。
ということで私も早速、「跨境王4G」をネットで購入して、上海出張で試してみることにしました。
FDD-LTE Band3対応のスマホならOK!
上でも少し触れましたが、香港聯通の中国大陸向けSIMは現地ではチャイナ・ユニコムの電波を掴むため、スマートフォンがチャイナ・ユニコムの周波数に対応している必要があります。
チャイナ・ユニコムの4Gは主にFDD-LTE Band3を使っています(他にTD-LTE併用エリアもあり)ので、FDD-LTE Band3に対応しているスマートフォンであれば、中国でも手軽に壁越え高速モバイル回線が確保できる、と言う訳です。
Band3に対応しているSIMフリースマートフォンはかなりあるので、これからは跨境王4G版を全力でオススメできるかな、と思ったのですが…
中国側の電話番号がなくなってしまった
実は、今回アップグレードされた「跨境王4G」は、単純にこれまでの「跨境王(3G版)」を置き換えるものではないようです。
というのも、今回新しく発行された「跨境王4G」は香港側の電話番号のみで、中国側の電話番号がついていません。
これは中国で現在、実名登録をしていない電話番号の発行が禁じられていることと関係しています。
ビジネスなどでは意外と電話を使う機会もまだまだ多いので、私は跨境王3G版の電話番号を自分の連絡先にしているのですが、4G版には中国の電話番号がついていないとなるとちょっと困りますね…
中国の電話番号が欲しい方はこちらの記事が参考になります
跨境王4Gの料金プラン
パッケージを見てみると、4G版「跨境王」には以下のプランが設定されています。
跨境王4Gの通信料金 | ||
---|---|---|
初期残高 | 80HK$(チャージ可能) | |
月額基本料金 | 6HK$ | |
有効期間 | 90日(チャージで延長可) | |
香港 中国大陸 | 従量料金 | 0.8HK$/MB |
7日300MB | 48HK$ | |
30日500MB | 68HK$ | |
30日1GB | 118HK$ | |
マカオ 台湾 香港 | 従量料金 | 0.02HK$/KB |
1日最高額 | 68HK$ |
購入したSIMに含まれる残高は74香港ドル(当初残高80HK$-月額基本料金6HK$)なので、追加チャージをしていない状態では7日間300MBまたは30日間500MBのプランに申し込むことができます。
パケットパックの申請方法と残高確認方法
跨境王4Gのパケットパックを申請したり、残高を確認したりするにはスマホの電話アプリから特殊な「USSDコード」というものを送信します。
コードを送信と言っても指定された番号に電話をかけるだけなので全く難しくありません。
跨境王4Gのパケットパック申し込み・残高照会ダイヤル | |
---|---|
7日300MB | *118*600# |
30日500MB | *118*601# |
30日1GB | *118*504# |
残高照会 | *118*35# |
すると、実際には電話はつながらず、しばらくしてSMSで応答が帰ってきます。
パケットパック申請に成功した時はこんなメッセージが届きます。
残高照会をすると、現在の残高と有効期限がSMSで届きます。
中国語と同時に英語のメッセージも届きます。
「跨境王4G」はアクティベートが難しい?
ということで、さっそく跨境王4G版の300MBパッケージを使ってみたいと思うのですが、そこに立ちはだかるのが「アクティベートがなかなかできない」という問題です。
この問題は、跨境王4Gを発売後すぐ深センで試されているshimajiro@mobilerさんの記事で報告されていました。
記事によると、跨境王4GをSIMロック解除済みのdocomo版Galaxy S7 edge(SC-02H)Galaxy Note5(SIMフリー)のデュアルSIMモデルに入れてみたものの、そのままではアクティベーションがされなかったようです。
shimajiroさんによれば、Galaxy S7 edgeGalaxy Note5に入れてあったもう1枚のSIM(CMHK)で音声通話をしようとしたところ、なぜかアクティベーションに成功したので、2Gネットワークに接続すればアクティベートできるのではないか、とのこと。
Nexus5ではアクティベーションせず
今回、跨境王4G版の検証には、しばらく使っていなかったGoogleのNexus5を使うことにしました。
Nexus5はFDD-LTE Band3に対応しているので、検証にはぴったりの機種と言えます。
まずは、特別な設定もせずに跨境王4G版をSIMスロットに挿してしばらく待ってみますが、アクティベーションの通知は表示されず・・・
スマホを再起動したり、香港聯通のカスタマーセンターに音声通話をかけてみても、状況は変化しません。
3Gでも2Gでもアクティベーションせず
ということで、上のshimajiroさんの記事を参考に、有線ネットワークを2Gに切り替えてみますが、やはりアクティベーションされず。
ダメ元で3Gに切り替えてみたり、無理やりCHINA MOBILEに繋げてみたりしますが、どうにもこうにもアクティベートされません。
夕方に現地の友人との約束があったので、いったんここまでにします。

上海の西蔵路×淮海路から少し南側にある「東北四季餃子王」、美味しいので翌日もここで夕食にしました。
友人の中国移動スマホに挿してみたらあっさり開通
で、ふと思いついて、友人の小米スマホ(チャイナ・モバイル版)を借りて跨境王4G版を挿してみます。
チャイナ・モバイルとチャイナ・ユニコムは3Gと4Gは周波数が違いますが、少なくとも2Gは同じ周波数が使われているので、もしかして…とわずかな期待を抱きながら電源をONするとついに、
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
跨境王4G版のアクティベーションのきっかけは分からずじまい
さて、アクティベーションはされたのですが、これでは何がきっかけでアクティベーションされたのかがさっぱり分かりません。
shimajiroさんの仮説どおり「2Gで接続されるとアクティベーションされる」のであれば、Nexus5で開通しなかったのは…
もしかするとチャイナ・ユニコムが一部エリアで展開しているTD-LTEの電波を掴んで…と一瞬考えたりもしましたが、スマホの仕組み的に4Gの電波を掴むにはまず3Gで接続する必要があるので、その可能性もおそらくないでしょう。
ということで今回は「跨境王4G版をアクティベーションさせるにはあれこれやってみるしかない」という身も蓋もない結論で終わってしまいました。。。
速度はかなり快適な10Mbps超え
さて、やっと開通した跨境王4G版を2日間使ってみました。
まずは300MBパケットパックを申請してみて、速度測定してみると、下り約19Mbps、上り約1.8Mbpsとまずまずの速度で繋がりました。
日を改めて、今度は楽天モバイルのHonor6 Plusで使ってみました。
Honor6 PlusはCMHK(中国移動香港)SIMで使えるスマホの中ではかなり安く手に入るので、いつも中国出張で重宝しているのですが、Honor6 Plusはチャイナ・ユニコムの周波数にも対応しているので、跨境王4G版でも試してみることに。
時間帯やエリアが異なるので、下りは約3Mbpsまで落ちてしまいましたが、今度は上りが約9Mbpsとまずまずの速度です。
これまでの跨境王は、3Gしか使えなかったので特に上りが遅かったのですが、これなら写真や添付ファイルの送受信にも使えそうです。
パケットパックの使い切りに注意
ただ、この快適さに慣れてガンガン使ってしまうとあっという間にパケットパックを使い切ってしまうので気を付けないといけません。
私は利用開始から40時間ほどで300MBを使い切りました。
跨境王は、パケットパックを使い切ると自動的に従量料金になり、あっという間に残高を使い切ってしまうので注意が必要です。
まとめ:跨境王4Gはつながれば快適だが上級者向き、
と、こんな感じで慌ただしく「跨境王4G」を検証してきましたが、今のところは初心者~中級者にはオススメできる状態ではない、というのが正直な感想です。
追試お待ちしています!
そしてもし「跨境王4Gの謎を解明してみよう!」という奇特な方はぜひ、結果を教えてくださればうれしく思います!
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